宅地地盤Q&A

法律関係,支持力など,地盤調査・基礎関係,沈下修復工事という4つの分類に分けて,Q&Aで解説する.

A.1 法律関係

スクロールできます
質問答え
1六価クロムの溶出検査はどのような時に要求されますか?国土交通省関係の建設工事の際には,六価クロムの溶出検査を実施し,溶出梁が土壌基準以下であることを確認しなければならない.六価クロムは強い酸性で人体に有害であり,セメントやセメント系固化材に微量ながら含まれる.高炉セメントや六価クロム対応用のセメント固化材がある.
2四号建築物㎡とは何か?建築基準法第6条には,建築規模を表す分類名称が示されている.四号建物とは木造2階建で,延べ面積500㎡以下,高さ13m以下,軒高9m以下の建物をいう.
3国土交通省告示第1113号とは何か?それは戸建住宅にも適用されるのか?告示1113号とは,建築基準法施工例第93条の規定に基づき,地盤の許容応力度や地盤調査の方法などを定めた法律である.戸建て住宅などの四号建物は,その構造計算が」建築主事に求められる必要確認事項から除かれる特例はある.しかし,地盤の許容応力度を定める式中にSWS試験による結果も含まれることから,建築士として遵守すべきとの見方もある.
4地盤の種類と許容応力度の法律に従えば,地盤調査は不要か?地盤の許容応力度は,地盤の許容支持力(度)と同じ意味と見されている.しかし,この表は単なる目安であり,しかも地山の値である.一方,戸建住宅の基礎深さはせいぜい30㎝程度であり,ほとんど埋土である.したがって,当然,地盤調査を実施し,その結果に応じた基礎を選定しなければならない.
5地盤の種類と許容応力度は最低でも30kN/㎡は確保できるのか?確保できない.基礎底面から下方2m以内に0.75kN以下の自沈層が存在すれば,地盤の許容応力度は30kN/㎡を下回る.
6品確法とは何か?平成12年(2000年)4月に施工された法律で,正確には「住宅の品質確保の促進法に関する法律」という.工務店,住宅メーカ,分譲住宅会社などの受託供給者が新築住宅の瑕疵保証を10年間にわたり行うことを義務づけている.
7住宅瑕疵担保履行法とは何か?住宅瑕疵担保履行法は平成19年(1999年)に制定された法律で,供託制度と保険制度の2種類からなる.供託制度とは倒産などにより瑕疵保証ができなくなる場合に備えて,売主が現金や有価証券などを法務局の供託所などに預ける制度であり,大手住宅メーカーに多くみられる.一方,保険制度とは売主が新築住宅を供給する際に国土交通大臣の指定を受けた保険法人と契約を結び,資力を確保することをいい,一般の住宅メーカーや工務店,地盤補強工事専門会社が加入してい.
8地盤保証とは何か?「地盤保証」とは,国土交通大臣の指定を受けた保険法人が,住宅地盤の調査会社が行った地盤調査結果や地盤補強工事の不具合に起因して,建物が不同沈下などのより破損した場合,その補修を行った事業者に保険金が支払われることを約束することをいう.ただし,不同沈下の原因や瑕疵の内容次第では,保険金が支払われないこともある.
9宅地造成等規制法とは何か?宅地造成等規制法は,昭和36年(1961年)に制定された法律で,宅地造成に伴う崖崩れや土砂の流失によって,宅地に被害が出ることを防ぐ㎡」ことをもくてきとmした法律である.宅地造成工事規制区域の指定や工事の届出と許可,この法律以外に崖崩れ,土石流,地すべりといった土砂災害のおそれのある区域については,土砂災害防止法が平成12年(2000年)に制定されている.
10建築基準法,施工例,告示との関係はどうなっているのか?建築基準法とは,建築物の安全性の確保を目的として,敷地,構造,設備などに関する最低性能の基準を定めた法律である.施工例と告示は,建築基準法をさらに細分化したものであり,下図のような関係となっている.
11学会指針に法的拘束力はあるのか?学会指針は,日本建築学会構造委員会が独自の学術的見解に基づいて,一つの推奨指針としてまとめたものである.したがって,指針は法的規制力はない.
12柱状改良が原因の不同沈下は住宅会社の責任か?基礎の選定および設計は,建築士の責任で行うものであるから,柱状改良体の強度,径,本数,長さは住宅会社の建築士の責任のもとで決定される.したがった,もし,住宅が不同沈下すれば,それは住宅会社の責任となる.

A.2 支持力・変形・その他

スクロールできます
質問答え
1建築物が沈下・変形した場合,どうやって建物被害の程度を調べればよいか?建物の変形は,傾斜各(床や基礎の傾斜角度)と片計画(基礎や床がV字型㎡やへの字型に折れ曲がっている場合の折れ曲がり角)の2種類から判断する.これらを知るためいは,床面または基礎天端のレベル測量(高低差測量)が必要である.測定した角測点間の高低差Δh(A点のレベル地ーB点のレベル地=ΔhAB)を求め,測点間距離Lで除することで,単位長さ当りの高低差として,○○/1000の形で表す.変形角とは,V字型に変形していたものとし,への字型の場合は傾斜角の差として求める.
2戸建住宅の杭の頭はなぜ基礎の中に埋め込まないのか?戸建住宅に用いる杭状の地盤補強は,ビルの下に計画する杭基礎(建物荷重や地震時等の荷重を杭に負担させる構造)とは異なり,地震時などに発生する水平荷重を地盤面の摩擦抵抗及び基礎外周面に働く土圧によって,基礎全体で支える構造となっている.したがって,杭状の補強体を基礎に埋め込ませると,補強体及び補強体を埋め込ませた基礎部分に水平荷重が集中するため,おのおのが損傷する可能性高くなる.
3杭状地盤補強の支持層厚はどの程度必要か?杭径が細く,先端支持力を主体とした工法(小口径鋼管杭,コンクリートパイルなど)の支持層圧は2m以上確保する.杭径が太く,摩擦力を主体とした工法(柱状改良など)の支持層厚は,先端支持力を算出する際に使用㎡したN値以上の層厚を改良径の3倍以上確保する.
4一般に,建物はどの程度の傾きが発生した時に補修されるのか?一般に,人間は6/1000程度の傾斜角から不同沈下を強く意識するようになる.6/1000の傾斜角は,品確法技術的基準レベル-3に相当し,建築会社がその建物に対して一定の瑕疵があることを認めなければならない基準値(自然災害による場合を除く)となっている.したがって,6/1000以上での修復の工事が非常に多い.
5戸建住宅でも杭に負の摩擦力は発生するのか?軟弱地盤の上に厚い盛土を行った地盤などは,盛土の自重による圧密沈下および盛土自体の圧縮沈下により地盤沈下が発生する.したがって,このような地盤で杭状地盤補強を行うと,地盤の沈下に伴って杭も一緒に引きずり込まれる力(負の摩擦力)が発生する.
6地盤沈下と不同沈下は違うのか?地盤沈下とは,建物荷重の影響,盛土や埋土の影響,地下水の汲み上げの影響など,地域全体にさまざまな要因で発生する地盤沈下の総称である.一方.不同沈下とは,建物下部で不均一に地盤が沈下し,建物が傾斜・変形する沈下をいう.従って,地域全体が均一に100mm地盤沈下しても問題にならないが,不均一に50mm沈下(不同沈下)した場合,建物への損傷や居住性の悪化など,大きな問題が生じる.
7盛土の存置期間は何をもって判断する?盛土を行ったら,圧縮沈下および圧密沈下が落ち着くまで一定期間存置する必要がある.一般的な存置期間は,砂地盤の場合1~3年程度,粘性土地盤の場合3~5年程度である.谷や沼などに厚い盛土を行った造成地では10年以上沈下が継続することもある.
8盛土に起きる不具合は?土は非常に重く,60cmの盛土で2階建程度の重量がある.したがって,下部地盤が軟弱な粘性土の場合,盛土荷重により土粒子間の水が押し出されて,圧密沈下が発生する.また,盛土する際に充分な転圧(締固め)が行われていないと,降雨や土の自重の影響で土粒子が移動し,圧密沈下が発生する.また,スレーキング(乾燥と湿潤を繰り返すことで石がボロボロになる現象)が発生するような不適切な盛土材なども体積変化するため注意が必要である.
9転圧の方法に基準はあるのか?転圧する機械の能力や土質によっても異なるが,盛土や埋土をする際の1層あたりの巻き出し厚さは,標準30cm,最大50cmとする.盛土厚が2m以内で,かつ均一な場合は,転圧後の地盤のN値が約3以上(SWS試験の場合,平均Nsw>0かつWsw≧1kN)になるように転圧を行う必要がある.擁壁の埋戻しのような部分盛土では,N値が約5以上(SWS試験の場合,平均Nsw>40かつWsw≧1kN)になるように転圧を行う必要がある.
10テルツアーギの修正支持方式,平板載荷,SWS試験による支持力式のうち,どれが一番値が大きくでるのはどれか?国土交通省告示第1113号には,地盤の許容応力度の求め方が3種類示されている(同子告示第1113号第2項を参照):(1)に示す標準貫入試験結果から求めるテルツアーギの修正支持力式.(2)に示す平板載荷試験結果から求める支持力式.(3)に示すSWS試験から求める支持力式.住宅地盤の支持力を求める際は,基礎下から2mの平均支持力を用いることが多いが,平板載荷試験は,深さ45~60cm程度までの地盤特性しか反映されないため,盛土地盤のように表層だけ硬く,下部地盤が軟弱な地盤では,(2)式から求めた値は非常に大きくなる.しかし,この値は下部地盤を評価していないため,単純に比較しないよう注意が必要である.(1)式と(3)式を比較すると,標準貫入試験yとSWS試験の信頼性と同様,(1)>(3)となる.

A.3 地盤調査・基礎関係

スクロールできます
質問答え
1鋼管腐食しろとは何か?鋼材が常時水中または土中にある場合,腐食は一般的に1年0.02mmと言われている.そのため,支持力計算の歳には,鋼管の外形1.0mm(0.02mm×50年)の腐食しろを考慮して計算する.
2地盤の許容支持力,許容地耐力,許容応力度の関係?許容支持力とは,限界支持力(地盤が破壊した時の荷重強度)を安全率で割った値である.許容地耐力は,許容支持力および沈下または不同沈下量が許容限度以内に収まる力である.許容応力度は建築基準法や国交省告示で使われ,建築基礎構造設計指針で使われる許容支持力と意味は同じである.学会の考えでは.許容支持力呼ぶのが正解だとしているが,告示などでは他の構造材と言葉を統一して許容応力度と呼ばれている.
3かぶり厚さの不足はどんな問題をおこすか?建築基準法施行令第79条では「鉄筋に対するコンクリートのかぶり厚さは,耐力壁以外の壁または床にあっては2㎝以上,耐力壁,柱又ははりにあたっては3cm以上,直接土にせする壁,柱,床もしくははり又は布基礎の立上り部分は4cm以上,基礎(布基礎の立上り部分を除く)にあっては捨てコンクリートの部分を除いて6cm以上としなければならない」と規定されている.鉄筋を外気から保護するコンクリートの厚さが不足すると,鉄筋が錆びやすくなる.鉄筋は錆びると体積が増すので,コンクリートを押してひびが入り,さらに鉄筋の錆が進行すると,コンクリートに亀裂や剥離が生じる原因となる.
4雨の日のSWS試験結果は,晴れの日より悪くでるのか?豪雨の影響により地表面が晴天時より,試験結果が晴れの日より悪くなる可能性はある.そのため,SWS試験方法について平成25年(2013年)に改正されたJIS A1221:2013では,試験実施において報告する事項として「調査実施の気象情報」を記載することを定めている.
5布基礎の「布」はどんな意味か?水平,長形,連続などを表す「布」が布基礎の語源である.
6べた基礎に鋼管や柱状改良をしてもよいのか?鋼管や柱状改良等の地盤補強をする場合,基礎の立上り部にのみ配置することが望ましい.基礎スラブ部に配置すると,パンチングシェア(押抜きせん断)の検討が必要な場合があり,基礎スラブの鉄筋量を増やして配置する場合もある.
7戸建住宅の場合,べた基礎に本当に荷重分散効果はあるのか? 布基礎より基礎の設置面積が広いため,荷重分散効果により単位面積当りの荷重は小さくなる.しかし,次のようなことが考えられ,地盤にあった基礎を選定することが重要である.①布基礎よりもコンクリート量が増えるため,建築物事態の重量がおもくなる.②布基礎よりも接地幅が長くなるため,圧力球根(応力が及ぶ範囲)が大きくなり,地盤の深部にまで荷重の影響が及ぶ.
8SWS試験や標準貫入試験の費用は?SWS試験(5ポイント)3~5万円,標準貫入試験(15~20m)20万円程度が大まかな目安である.
9柱状改良コラムの径は布基礎の場合,基礎幅より大きくすべきか,小さくすべきか?小規模建築物を対象とした柱状改良コラムの径は,500~800mm程度が一般的である(布基礎の標準幅は450mm).支持力計算の際には,柱状改良体が基礎からはみ出る部分の面積は有効に働かないと考え,基礎が乗っている部分の改良体面積を使用する.基礎幅より柱状改良体を小さくすることで,コラムの断面積を有効に使用することができるが,改良径が小さくなるほど,土質による固化不良や,施工時の土塊混入による出来形不良の影響を受けやすい.土質や地域性を考慮して,改良体の仕様を決定することが重要である.最近の認定工法は,改良径300mmや400mmの工法もあり,そのような工法も選択肢の一つである.
10地業は割り栗石でなくてもよいか?基礎下に敷かれている割り栗石は,建物の荷重を地盤に伝える役割がある.しかし,良好な地盤では,割り栗地業を行うと地盤の支持力低下させる場合がある.戸建住宅の場合は,割り栗石の代わりに砂利を敷き込んで突き固める方法が一般的である.
11捨てコンは絶対必要か?捨てコン自体に構造上の役割はないが,基礎工事の施工精度を上げるために重要な部分である.割り栗地業を丁寧に行い,その表面を平らに仕上げることができれば,捨てコンクリートは必要ないと言える.
12ハザードマップとはなにか?自然災害による被害を予測し,その被害予告を地図にプロットしたものをいう.予測される災害の発生地点,被害の範囲および程度が図示されている.ハザードマップによっては,避難経路,避難場所などの情報を付記しているものもある.東京都の液状化予測図は,収集したボーリング資料の分布などを基に図示されている.また,過去の災害履歴を考慮したマップもある.
13表面波とレイリー波は同じですか?通常,表面ははレイリー波と見なされるが,レイリー波は表面波の一つであり,表面波にはレイリー波の他にラブ波がある.レイリー波は地表面が最も大きく,深部に行くに従って減少する.ラブ波は,進行方向の直角な方向に振動する波である.

A.4 沈下修復工事

スクロールできます
質問答え
1施工前,施工後のレベル調査は,どのように行うべきか?傾斜の測定は,品確法第70条技術基準において,床,壁,柱と記されている.施工前,施工後のレベル調査は,伊パン的には室内の床で凸凹の少ない仕上げ面における2転換を結ぶ直線(長さ3m程度以上のものに限る)と水平面との間の傾斜を測定する.傾斜はレベル1~3の段階に基準を㎡定めている.レベル1は3/1000未満の傾斜(瑕疵が存する可能性が低い),レベル2は3/1000以上6/1000未満の勾配の傾斜(瑕疵が存する可能性が一程度存する),レベル3は6/1000以上の勾配の傾斜(瑕疵が存する可能性が高い)を表す.
2沈下修復を行う際の地盤調査はSWS試験だけで十分か?ボーリング調査は行わなくてよいか?SWS試験では,土質や支持層の層厚などは確認できないが,1ヶ所だけのボーリングデータで判断するのも危険である.SWS試験とボーリング調査を行うことで,支持層の深さが分かるが,戸建住宅であれば,近隣ボーリングデータがあって,その地域の地盤が把握できれば,SWS試験だけでも問題ない.
3アンダーピーニング工法の支持層はどのように決定しているか?支持層とは,基礎に接して荷重を支えるための支持層であり,硬質層とは限らない.アンダーピーニング工法は,建物荷重を反力として建物を鋼管圧入によりジャッキアップさせる工法である.通常は鋼管をN値10~15程度の層まで鋼管を圧入することで,建物が持ち上がり,その層を支持層としている.砂層などでは高止まりして設計杭長に達しない場合もあるが,十分支持力を得られジャッキアップできれば再沈下の可能性は低い.
4アンダーピーニング工法(鋼管圧入工法)施工後にピアノの設置などにより,荷重がm増加した場合,再沈下は起きるか?また,どの程度の荷重増加まで許容範囲と考えるべきか?実験結果から鋼管圧入工法は打込み工法と同等の支持力がある.よって,打込み杭同様必要支持力が30kN/㎡以上×3倍(短期安全率)=90kN/㎡以上あれば長期安全率を確保できる.設計の際は,鋼管1本当り30kN/本程度考えており,布基礎で,20kN/㎡以上の荷重を見込んだ杭本数を設定している.よって,20×1.5(長期安全率)=30kN/㎡程度であるため,30kN/3=10kN/㎡,ピアノが1.5×0.65≒2.4kN/㎡であるから,10kN/㎡>2.4kN/㎡で許容範囲と考えられる.
5鋼管を継ぎ足しても,耐力低下は起きないのか?また,杭(鋼管)接続部の問題はないのか?鋼管圧入工法は,1m程度の鋼管を継ぎ足して施工するため,継手部には十分な配慮が必要である.継手は,性能を確認した機械式継手やネジ式継手,または中当てリングを使用した突合せ溶接とし,耐力低下のない継手を使用するのが原則である.溶接継手の際は,中当てリングを鋼管内部に入れ,上杭と下杭の外周を突合せ,しっかり溶接する必要があるが,鋼管裏側に回り込むと,その分余計に掘削ことになる.地下水位が浅い場合や,掘削が困難で溶接が難しい場合はネジ式や機械式継手の使用が効果的である.
6支持杭の杭頭処理はどのように考えるべきか?鋼管杭とは,直径φ318.5mm,肉厚6.0mm以上のものをいい,例えば,ネジ式継手に使用する鋼管は,小口径鋼管φ139.8mm肉厚4.5mmまたは6.0mmで,あくまでも住宅業界の地盤改良の地業にあたる.よって,基本的には,基礎と杭との連結はしない.連結すると,地震力に応じて発生する水平力が基礎との連結部に伝達され,基礎が持ちこたえられないからである.
7沈下修復の工事中は居住できるのか?住環境としては,音や振動を伴うこともあるが,居住に関しては,特に問題なく,土台上げ工事などでは床材を撤去する(一般的には和室の畳部屋を利用する)場合が多い.
8鋼管圧入工法は建物の基礎を破壊するのでは?コンクリート強度が不足している基礎などにおいては,破壊するおそれがある.したがって,鋼管圧入の際は,基礎の寸法,配筋,強度などが不足している基礎に対しては,基礎補強を検討する必要がある.基準を満たしている基礎でも0.3mm程度以下のヘアークラックが出る場合もあるが,構造クラックとは異なり,エポキシ樹脂などによる補修で十分である.
9建物の修復費用はどの程度か?戸建住宅の修復費用は,地盤状況(軟弱地盤の層厚など)や補修計画(現状復旧,沈下原因の除去)によって工法や仕様が大きく異なる.
部分受けの場合300~500万円程度,
全受け(杭長10m以内)の場合1000~1500万円程度が目安である.
10修復工事の種類とその信頼性の順位は?修復工事を選定する際は,沈下が終息しているか継続しているかで考え方が大きく異なる.沈下が終息している地盤には,地盤を補強せず上屋だけ修正する工法(ポイントジャッキ工法,土台上げ工法)が適用できる.しかし,沈下が継続している場合や,自然災害などにより再沈下する可能性がある地盤の場合,地盤や基礎を補強し,沈下要因を取り除く必要がある.その際は,安定した支持層まで鋼管を打設するアンダーピーニング工法(鋼管圧入工法)がもっとも信頼性が高い.耐圧版工法,ブロック圧入工法,薬液等注入広工法などの場合,地盤の状況や設計の使用により再沈下する可能性があるため,信頼性は劣る.
11部分的にアンダーピーニング工法で施工すると,不具合が出る場合があるか?部分的なアンダーピーニング工法は不具合を生む可能性がある.特に地盤沈下が進行していると,杭(鋼管)を施工していない箇所が沈下し,床や束などが下がったり,建具などに支障が出る場合がある.これは,アンダーピーニング工法が建物のジャッキアップ工法であって,地盤沈下を抑制する地盤改良ではないからである.地盤沈下を抑制するには,別途薬液注入等の地盤改良が必要である.
12杭(鋼管)が圧入できることから,周辺摩擦も加味されると思うが,その後,杭周面摩擦が小さくなり,支持力が低下することはないか?質問3でも述べたように,支持層に達している支持杭との扱いとなり,周面摩擦は考慮しない設計を行っている.よって,杭(鋼管)周辺の地盤が沈下することによって,支持力が低下することはない.